【メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合】
出典:『職場のメンタルヘルス対応マニュアル』(中央経済社)
【『自分史』の活用効果を示唆する参考論文】
Orabiグループは、『自分史』への取り組みが「うつ」を予防・抑止するという視点から、企業のメンタルヘルスケア対策にに役立つものと考えています。以下、参考とする論文の概要を紹介いたします。概要および推論の視点の記述は、中野富生によるものです。
(1)
【論文タイトル/著者】
「肯定的・否定的自己への注目が省察と反芻、抑うつに及ぼす影響」/熊田麻里、及川恵
【概要】
自己に関することに意識を向けることを自己注目というが、現実自己と理想自己の乖離が自尊感情に影響することから、自己の肯定的な部分に注目することは精神的健康にポジティブな影響をもたらすと考えられる。また、否定的自己への注目も不可欠であり、否定的な自己側面から目を背けることは、かえって自己嫌悪を増幅させてしまうことがある。
【推論の視点】
現実自己と理想自己の乖離が自己評価を下げ、自信喪失や感情の乱調につながります。しかし、その自己評価は一面的な他者との比較による否定的視点を介在させたものとなりがちです。『自分史』への取り組みが、自分への肯定感をとりもどすきっかけになればと願います。
(2)
【論文タイトル/著者】
「自己概念の明確性および自尊感情が精神的健康状態の変動性に及ぼす影響」/徳永侑子、堀内孝
【概要】
自己概念の明確性とは、その内容や信念が明瞭に定義され、安定し、一貫性を保っている程度を表わす。また自尊感情は、自己評価の好ましさを表わし、心理的な適応の指標となる。自己概念の明確性は「身体的症状」や「不安・不眠」に対して、また自尊感情は「社会的活動障害」に対して独自の影響を及ぼしている。
【推論の視点】
難解な用語が概要に並ぶが、要するに「自分らしさ」を確認し、それを容認することで、精神的健康状態の維持に効果があるということです。優劣といった評価基準を離れ、他者と自分との違いを客観的に見つめ、「自分らしさ」を大切にしようとする視点に『自分史』は立ち返らせてくれるはずです。
(3)
【論文タイトル/著者】
「大学生によるポジティブな自己像の筆記が抑うつに及ぼす影響」/加納愛理、山本眞理子
【概要】
筆記療法は、外傷体験やそれにまつわる感情を開示することで身体的・精神的健康の増進に役立てることをねらうものである。ポジティブな自己像の筆記によりポジティブ感情が増加し、ストレングスシンキングが高まることでネガティブ思考が低下し、抑うつ解消に効果があると考えられる。
【推論の視点】
筆記する行為そのものは外観的であるが、筆記しながら人は自分なりの価値基準に分け入ろうとします。たとえば「家族」について何か記述するとき、その人は自分の「家族観」に分け入るのです。同様に「自分」について記述するとき、「自分観」に分け入ります。そのとき、抱えている不安や不満を正当視することにより、解決イメージを得ることもあるのです。