青い鳥の背中 · 2023/11/21
小学校入学の前の1年間、わたしは保育園に通った。 話を急ぐが、ある日の午前のこと、先生がある本のページを開いて 「こんなものがあるのよ、おもしろいね」と、みんなに見せてくれた。 それは、木の実や木の葉や松ぼっくりを組み合わせて作った 鳥や動物のフィギュアだった。 これなら作れる、わたしはそう思って...
青い鳥の背中 · 2023/11/08
おエイさんは、わたしの伯母(父の姉)で 先年、享年110歳で亡くなった。 明治、大正、昭和、平成、令和を生き抜き 和歌山県では最高長寿者だった。 おエイさんは、わたしの母が長期の入院をしたとき 自営する田舎の小さな食堂を閉じて、半年ほど主婦代わりをしてくれ 中学校1年だったわたしと2歳下の妹はずいぶんお世話になった。...
青い鳥の背中 · 2023/10/30
『水曜の朝、午前3時』という、蓮見圭一氏による小説がある。 わたしは恋愛小説というものを毛嫌いしてきたが いつだったか誰かが貸してくれて、期待せずに読んだが期待を上回った。 それで若い仲間数人に贈って、読んでみろと勧めたことがあった。 だがこの記事は、その話ではないし、恋愛の話でもない。 40歳になった頃の、ある日曜の朝のことである。...
青い鳥の背中 · 2023/10/13
わが家のテーブルは、壁沿いに立つ書棚と向き合っている。 独り暮らしのわたしは、食事のたびそこに居並ぶ本の背表紙を 見るともなく眺めることになる。 引っ越しのたびに思い切りよく本も捨ててきたので 70歳となってそこにある本の面々は、ある意味で選ばれた者たちだといえる。 それらは、過ぎ去りし日の好奇心の燃えカスではあるが...
青い鳥の背中 · 2023/10/01
わたしが4歳だったころ、一家4人は 裏町のまことに小さな家で暮らしていた。 ときおり公園に紙芝居屋が立つこともあった時代だ。 父は、家から勤める製鉄会社まで自転車で通っていた。 まだテレビのない時代で、夕食後、家族はラジオに耳を傾けながら それぞれの時間の中にいた。 電球の明かりとラジオの声の下、チラシやカレンダーの裏に...
青い鳥の背中 · 2023/09/20
お迎えが待ち遠しい。 そんなことをいうと、闘病に身を削っている人に叱られそうだが この歳(70歳)であと30年生きることになる身なのだから どうかご容赦いただきたい。 ところで輪廻転生を信じるかと、もし問われたら ウ――ンと躊躇してから、わたしはコクリとうなずく。 もちろんコクリの理由はあって、一寸の虫にも五分の魂、という。...
青い鳥の背中 · 2023/09/15
わたしの家からだと、中学生が漕ぐ自転車で30分もあれば、海に着いた。 夏休み前の期末テストを終えた日、わたしはふたりの友人と連れだって 岬へと向かう上り下りの末に、別の友人ふたりと海辺で落ち合った。 そこは漁師町の地元の子しか来ないような入江の一角で 永年の波でうがたれた岩の大きな窪みに、ゆっくりと呼吸するかのように...
青い鳥の背中 · 2023/09/06
目の前の人が赤いカーネーションを見せて 「この花は赤いですよね、ちがいますか?」と訊いたなら あなたは、もちろん「ええ、赤いですよ」と答えるだろう。 わたしだって、本当はそう答えたかった。 小学校6年の担任は土井先生(40代、男性)だった。 算数の時間、カッカッカと黒板にチョークで 例問を解いてみせ、「ちがいますか?」と生徒に返事を求める。...
青い鳥の背中 · 2023/08/21
英文法や世界史や因数分解って、人生でなんの役に立つの? ありがちな質問が、いまも世界のどこかで囁かれているのだろう。 その質問に加担するわけではないが、多くの教師が教壇に立ち 説いてくれた教科書の内容は、わたしの場合はおぼろげである。 印象に残っているのは授業の場面ではなく 教師がその人間性をポロリと露出した瞬間のことばかりなのだ。...
青い鳥の背中 · 2023/08/10
新聞は読まないし、テレビも見ない。 以前は年に1日、大晦日の格闘技番組だけは見たが、最近はそれもしない。 画面のむこうに動くものを見るのは、ユーチューブだけである。 1日1食が定着しているが食べることは大好きで 料理番組をのぞいては、今度あれを食べよう、なんて考える。 アグレッシブな論客の意見をつまみ聞きしたり、昭和の漫才で笑ったり...

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