編集後記とは、社史の最後に記載する社内編纂担当者(お客様)の感想文です。
それらの中から、社史制作にあたって感じたことや苦心したことなど、ホンネのにじむ部分を抜粋してみました。そうした期待と不安を抱かれる担当者様をバックアップし、ご期待以上の成果をお届けすることが、わたしたちの仕事です。
当社が平成25年4月に創業100周年を迎えるにあたり、先んじて社史制作の方針が決定されました。100周年を迎えることは、数年前から分かっていたことであり、記念としての社史作成についてもある程度の「心構え」はできていたつもりでした。
ところが実際に取り掛かると、その大変さは想像以上でした。過去の写真は年代や誰が写っているかなどの特定が難しく、また、資料としては通史という形では残っていなかったため、社長をはじめOBの方々にお忙しい中、確認をしていただきました。
*社史制作の担当に指名されたら、嬉しく思うか恨めしく思うか、それは人それぞれでしょう。
ふだんの仕事との兼務になるので、忙しさが上乗せされ、新たな責任も生じます。そうした理由から、社史制作業者の選定に際し「すべてお任せできますか?」のご質問が多いこともうなずけます。
このたびの創業100年史の編纂にあたっては、創業当時を伝える資料がほとんど現存しないという難題を抱えてのスタートとなりました。さらに創業の地が、ここ大阪とは遠く離れた山口県下関市であったことも、資料散逸の一因であろうかと考えられます。
*本件では、山口県立図書館のスタッフさんが積極的に対応してくださり、貴重な新聞記事を入手することができました。
残念ながら、私にはT氏(創業者)との面識がない。先輩方から伝え聞いた話や社内文書では、同氏は「町の発明家」とよく説明されている。しかしながら、このたび50年史の制作にあたって同氏を深く知るにつれ、多少の違和感を覚えつつあった。町の発明家という言葉からは、生活に余裕のある人間が道楽で発明を楽しむかのような印象を受けるためである。
実際のT氏(同)はぎりぎりの生活のなか、季節や昼夜を問わず、自宅の小さな実験部屋でただ独り、数十種類もの金属酸化物を乳鉢でひたすら粉砕し実権を続けたという。
*この文章から想像できるように、斬新な社風のクライアント様でした。創業者のご家族に取材し、社員の方も知らなかったエピソードや古い写真に出会い、完成書籍に反映させることができました。
この年に50年史として何を綴るのか。行き着いたのは地方局としての「原点回帰」でした。当社の礎を築いてきた先輩諸氏の志を浮かび上がらせ、それが今日にどう繋がっているのか探ろう。その糧として当社には開局間もなくから発行され続けてきた「社内報」があります。その中から先輩たちの息吹を探り今日までの歩みを綴る「社報に見る50年」ということにしました。
*業種の特性もあってか、社内報がほぼ完璧に残されているという、きわめて稀なケースでした。情報不足に戸惑うどころか、「あれも載せたい、これも載せたい」と割愛に苦労しました。
編纂にあたっては、OBの協力を頂き、また当社保有の写真も随所に引用させて頂きました。それでも漏れ無き資料の収集は難しく、年次によっては情報の不足を免れなかった事や、史実の記述と寄稿や写真のバランスを上手く取れなかった事など、反省すべき点も多くありました。
しかし、若いメンバー達が、自らが実を置くA(お客様社名)がどのような歩みを経てきたのか、それにはどのような意味があるのかなどを真剣に考えつつ編纂に取り組んでくれた事は大きな収穫でした。
*若いメンバー(といっても中堅どころ)の積極的な協力があると、資料が不揃いでも30年史くらいまでなら「なんとかなる」ものです。座談会を2本立て(中堅社員、若手社員)に組んで、40年史を3ヵ月で納品した経験もあります。
50年の歴史をまとめるには膨大な資料が必要です。当社は管工事を主体とする建設業であるため、「当社の製品はこれです」と明確に打ち出せるものがなく、また、工事はお客様の工場内で行うため、機密保持の関係で写真、図面等の資料も表には出せず、編纂作業は困難なものとなりました。
*メーカーであっても受注製作が主体の場合、製品写真を掲載できないケースが多くあります。本件の場合は、いくつかの自社製品をお持ちだったので、その開発工程にスポットを当て、製品開発史のページを設けました。
30周年記念事業の責任者である私自身、当初は社史編纂にあまり気が進みませんでした。当社はまだまだ発展途上であり、出来上がった会社のように過去を振り返る段階ではないと思っていたからです。
しかし、熱心に社史編纂の必要性を説く社員や、退職された諸先輩から会社の創設期・揺籃期の話を伺ううちに、当社が30年間成長してきた理由、今私達が感じる社風・風土がどのようにして出来てきたのかがよくわかり、これからも成長し続けるためのヒントが沢山あることに気付かされました。
*たしかに30年史というケースは多くはありません。しかし創業のドラマを記したい、創業者のエネルギーを社員に伝えたい、などの目的があれば、社史を作るタイミングにこだわる必要はありません。目的の明確な社史ほど、いきいきとした仕上がりを見せるものです。